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「店舗物件の原状回復とは?借主・貸主が知っておきたい範囲・費用・トラブル防止策」

2026年08月04日

「店舗物件の原状回復とは?借主・貸主が知っておきたい範囲・費用・トラブル防止策」

店舗物件の原状回復は、住宅とは考え方が異なり、契約内容によって費用が大きく変わります。
スケルトン返し、居抜き、造作・看板・設備の撤去、工事期限など、
借主・貸主双方が確認すべきポイントを解説します。


店舗の原状回復は、「借りたときの状態に戻せばよい」とは限りません。
スケルトン返しや居抜き、設備・看板の撤去、工事期限など、
退去時に慌てないために借主・貸主が確認すべきポイントを分かりやすく解説します。

 
はじめに

店舗物件の退去では、原状回復をめぐって大きな費用が発生することがあります。

「居抜きで借りたのだから、居抜きのまま返せると思っていた」
「内装をすべて撤去したのに、貸主から事務所仕様まで戻すよう求められた」
「解約日までに工事が終わらず、追加の賃料や損害金が発生した」

こうしたトラブルの多くは、契約時に原状回復の範囲や工事方法が
具体的に確認されていないことから起こります。

店舗では、借主が内装、厨房、給排水、空調、看板などに多額の投資を行うことが一般的です。
その分、退去時には住宅よりも工事の範囲が広くなり、費用も高額になりやすい傾向があります。

本記事では、店舗物件の原状回復について、借主・貸主それぞれの立場から、
契約前・営業中・退去時に確認しておきたいポイントを解説します。

1.店舗物件における原状回復とは

民法第621条では、賃借人は賃借物を受け取った後に生じた損傷について、
原則として原状回復義務を負う一方、通常の使用による損耗や経年変化などは除かれるとされています。

ただし、店舗や事務所などの事業用物件では、契約書や特約により、
借主が通常損耗を含む一定範囲の修繕、造作の撤去、
スケルトン返しなどを負担する旨が定められている場合があります。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は主に賃貸住宅を対象とした考え方です。
店舗物件にその内容がそのまま当てはまるとは限らず、
実際の負担範囲は、契約書、特約、引渡し時の状態、工事承諾書、当事者間の合意などを
総合して確認する必要があります。

つまり、店舗の原状回復では、「一般的にはどうか」だけでなく、
「この契約でどこまで合意しているか」が非常に重要です。

 
2.最初に確認したい「どの状態まで戻すのか」

店舗物件の原状回復で、最もトラブルになりやすいのが返還状態です。
主に次の3つがあります。

スケルトン返し

床・壁・天井の内装、間仕切り、造作、厨房設備、照明、空調、配線・配管などを撤去し、
建物の構造体に近い状態まで戻して返還する方法です。

飲食店や美容室など、借主が大規模な内装工事を行う店舗では、
契約書にスケルトン返しが定められていることがあります。

ただし、「スケルトン」の範囲は物件によって異なります。
貸主側の既存設備まで撤去するのか、分電盤・防災設備・共用ダクトへの接続部分を残すのかなど、
具体的な区分を確認する必要があります。

内装付き・事務所仕様への復旧

床、壁、天井、照明、空調などを備えた一定の内装状態まで戻す方法です。

もともと事務所だった区画を店舗へ改装した場合などは、単に内装を撤去するのではなく、
事務所仕様への復旧を求められることがあります。

過去の裁判例でも、居抜きで借りた店舗について、
スケルトン状態ではなく事務所仕様まで戻すことが原状回復の範囲と判断された事例があります。
入居時の見た目だけで判断せず、貸主がどの状態での返還を承諾しているかを書面で確認することが大切です。

居抜きでの返還

内装や設備を残したまま、次の借主へ引き継ぐ方法です。

居抜きで返還できれば、現借主は撤去費用を抑えられ、
次の借主は初期費用を軽減でき、貸主も空室期間を短縮できる可能性があります。

ただし、居抜き募集をしていることと、原状回復義務が免除されることは別です。
次の借主が決まらなかった場合や、貸主の承諾が得られなかった場合には、
契約どおりの原状回復が必要になります。

居抜きで返還する場合は、残す造作・設備、所有権の移転、故障時の責任、撤去義務の承継、
貸主の承諾などを書面にしておく必要があります。
 

3.店舗の原状回復で対象になりやすいもの

店舗の用途や工事内容によって異なりますが、次のようなものが原状回復の対象になりやすいです。

間仕切り壁、カウンター、造作棚、ステージなどの内装造作

厨房機器、シンク、グリストラップ、給排水設備

借主が設置したエアコン、換気扇、排煙・排気ダクト

照明器具、コンセント、増設した電気配線・分電盤

ガス管、給水管、排水管と、その閉栓・撤去処理

店頭看板、袖看板、壁面看板、窓面シート

外壁・床・天井などに設けた穴やアンカーの補修

借主が持ち込んだ什器、備品、商品、廃棄物

油汚れ、臭い、煙、薬品などによる特殊な汚損

看板を撤去しただけで終わりではなく、
固定金具や配線の撤去、外壁の穴埋め、防水処理、塗装の補修まで求められる場合があります。
また、設備を撤去した後の配管を誤って切断すると、
漏水やガス漏れなど重大な事故につながるため、専門業者による施工が必要です。

貸主が設置した設備、前借主から引き継いだ造作、契約時から残っていた設備についても、
誰の所有物で、退去時に誰が撤去するのかを明確にしておきましょう。
「残置物」と記載されている設備は、修理責任だけでなく、最終的な撤去負担も確認する必要があります。

 
4.店舗の種類によって注意点は異なる

飲食店

厨房設備、給排水、ガス、ダクト、グリストラップなど、撤去項目が多くなりやすい業態です。
油汚れや臭いが躯体・配管・ダクトに残る場合もあり、通常の清掃だけでは対応できないことがあります。

排気ダクトが外壁や屋上まで延びている場合は、撤去範囲、足場の要否、屋上防水の補修まで確認が必要です。

美容室・サロン

シャンプー台などのために給排水設備を増設している場合、
床下配管の撤去や閉栓処理が必要になることがあります。
鏡、造作家具、看板、専用照明なども原状回復の対象になりやすい部分です。

クリニック・歯科医院

医療機器用の配線・配管、給排水、バキューム設備、レントゲン室の防護工事など、
専門性の高い工事が含まれる場合があります。
通常の内装業者だけでは撤去できない設備もあるため、早い段階で専門業者を交えた計画が必要です。

物販店・サービス店舗

比較的設備が少ない業態でも、造作棚、床材、照明、サイン、セキュリティ設備などの撤去が必要です。
ロードサイド店舗では、大型看板や駐車場上の工作物、外構部分の原状回復が高額になることがあります。

ビルイン店舗・商業施設内店舗

館内規則により、指定工事業者、作業時間、搬出経路、養生方法、申請期限などが
定められていることがあります。夜間工事や搬出時間の制限により、工期と費用が増える可能性もあります。

契約書だけでなく、工事区分表や館内工事規則も必ず確認しましょう。

 
5.原状回復費用が高額になりやすい理由

店舗の原状回復費用は、単純に面積だけでは決まりません。主に次の要素で変わります。

内装・造作の量と使用している材料

厨房、空調、給排水、ガス、ダクトなどの設備

重機や足場の必要性

エレベーター、階段、搬出経路などの作業条件

夜間・休日工事などの時間制限

指定工事業者の有無

廃材の量や処分方法

アスベスト調査など、着工前に必要となる確認

外壁、防水、耐火区画などの補修範囲

工事期間中の賃料や管理費

見積金額を確認するときは、総額だけでなく、
解体、搬出、廃棄、設備撤去、補修、清掃、諸経費などの内訳を確認します。

借主指定の業者を利用できるのか、貸主・ビル指定業者を利用しなければならないのかも、
契約前に確認しておくべきポイントです。
指定業者には、建物の構造や設備を理解しているという利点がある一方、
相見積もりが難しい場合もあるため、工事項目と施工範囲を明確にすることが重要です。

 
6.工事は「解約日まで」に完了させるのが基本

店舗の原状回復工事は、通常、賃貸借契約が続いている間に行い、
契約終了日までに工事、貸主確認、鍵の返却、残置物の撤去まで終える必要があります。

営業終了日と契約終了日は同じではありません。閉店後に解体工事を始めるため、
一定の工事期間を確保しなければなりません。

契約終了日までに返還できない場合、
契約内容によっては賃料相当額や遅延損害金が発生する可能性があります。
次の入居者の工事や引渡しにも影響するため、貸主にとっても大きな問題となります。

解約予告期間が6か月とされている店舗も珍しくありません。
解約を決めたら、次の順序で早めに進めましょう。

契約書・特約・工事規則を確認する

貸主または管理会社と現地を確認する

原状回復範囲を書面で確定する

工事業者へ見積もりを依頼する

工程表を作成し、必要な工事申請を行う

工事完了後に貸主の確認を受ける

鍵・関係書類を返却して明渡しを完了する

 
 
7.借主がトラブルを防ぐためのチェックポイント

■契約前
 
「原状回復」「スケルトン返し」「造作撤去」の具体的な範囲を確認する

入居時の状態を写真・動画・図面で記録する

貸主設備、残置物、前借主の造作を一覧にする

指定工事業者や工事区分を確認する

退去工事のおおよその費用を内装業者へ相談する

営業中・内装変更時

貸主の承諾を得てから工事を行う

承諾書、図面、見積書、施工写真を保管する

新たに設置した設備と、もともと存在した設備を区別する

漏水、臭い、設備不良などを放置せず管理会社へ報告する

■解約・退去時

解約通知を出す前後に原状回復条項を確認する

早めに貸主・管理会社と現地立会いを行う

口頭だけでなく、工事範囲を図面や書面で合意する

居抜きでの引継ぎを希望する場合も、原状回復の準備を並行する

工事完了確認と明渡しの記録を残す

 
8.貸主がトラブルを防ぐためのチェックポイント

契約時に返還状態を具体的に定める

「原状に復して返還する」という一文だけでは、双方の理解が異なる可能性があります。

スケルトン返しなのか、入居時の状態まで戻すのか、
事務所仕様まで復旧するのかを明記し、
原状回復仕様書や引渡し時の写真・図面を契約書に添付すると効果的です。

内装工事の承認手続きを整える

借主がどのような工事を行ったか分からなければ、退去時の撤去範囲も判断できません。
工事前に図面・仕様書を提出してもらい、残してよいものと撤去すべきものを記録します。

退去前の立会いを早めに行う

解約日直前に初めて現地を確認すると、工期が不足しやすくなります。
解約通知を受けた段階で一次立会いを行い、工事範囲や指定業者の有無を共有しましょう。

費用の根拠を分かりやすく示す

原状回復費を保証金・敷金から控除する場合は、
見積書や写真を用いて対象箇所と費用の根拠を説明することが大切です。
必要な工事と次の入居者のための改良工事が混在しないよう、
項目を区別するとトラブル防止につながります。

 
9.よくある原状回復トラブル

「居抜きで借りたのだから、そのまま返せる」という認識違い

居抜きで入居しても、契約書にスケルトン返しや特定仕様への復旧が定められていれば、
その内容が問題になります。居抜き入居と居抜き返還を混同しないことが重要です。

前借主の設備を誰が撤去するか分からない

前借主から無償で引き継いだ設備であっても、現借主が撤去義務を引き受けている場合があります。
造作譲渡契約書、賃貸借契約書、貸主の承諾書を合わせて確認します。

貸主指定業者の見積もりが高い

指定業者の使用が契約条件となっている場合があります。
借主は契約前に指定の有無を確認し、退去時には工事範囲や数量、単価の説明を求めましょう。
貸主側も、指定業者であることだけを理由にせず、
見積内容を確認して説明できる状態にすることが望まれます。

工事が解約日までに終わらない

設備撤去後に予想外の損傷が見つかることや、貸主の完了検査で手直しを求められることがあります。
予備日を設け、余裕のある工程を組むことが必要です。

原状回復工事とリニューアル工事が混同される

原状回復後に貸主が新しい仕様へ変更する場合、すべてが当然に借主負担となるわけではありません。
借主が負担すべき工事と、貸主が次の募集のために行う改良工事を整理し、
合意内容と見積項目を照合することが大切です。

 
10.原状回復トラブルを防ぐ最大のポイントは「契約前の確認」

店舗の原状回復は、退去時だけの問題ではありません。

内装工事に多額の費用をかける店舗ほど、契約前に退去費用まで想定する必要があります。
契約書の一文を確認するだけでなく、返還状態、撤去する設備、指定業者、工事可能時間、
完了検査の方法まで具体的に確認しましょう。

貸主側も、借主へ一方的に負担を求めるのではなく、
物件をどの状態で返還してほしいのかを明確に示すことが重要です。
双方が同じ資料を見ながら合意し、工事履歴を残しておくことが、最も有効なトラブル防止策です。

店舗物件の仲介・管理・原状回復はミタスプロパティへ

株式会社ミタスプロパティでは、店舗・事務所・倉庫などの事業用物件の仲介・管理を行っています。

物件のご紹介だけでなく、用途や内装計画を踏まえた
契約条件の確認、貸主様との調整、看板・設備工事に関する相談、解約時の立会いまで、
事業用物件の実務に即してサポートします。

また、グループ会社との連携により、
退去立会い、原状回復工事、修繕、緊急対応などにも対応しています。
借主様には退去時の費用や工事範囲を把握しやすく、貸主様には次の募集へつなげやすい、
双方にとって分かりやすい調整を心がけています。

「契約書の原状回復条項が分かりにくい」
「居抜きで募集・退去したい」
「店舗の原状回復工事をどこまで行うべきか確認したい」
「借主との認識違いを防ぎたい」

このようなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※原状回復の範囲や費用負担は、個別の契約内容、特約、物件の状態、当事者間の合意等により異なります。本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別案件について法的判断が必要な場合は、弁護士等の専門家へご相談ください。
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