不動産をお持ちの方にとって、「将来の相続をどうするか」は避けて通れない重要なテーマです。
その選択肢の一つが 生前贈与。子どもや孫、配偶者へ不動産を早い段階で移転しておくことで、
相続税対策や円滑な財産承継につながります。
一方で、贈与方法を誤ると税負担が増えたり、家族間のトラブルにつながる場合もあります。
この記事では、不動産の生前贈与について
メリット・デメリット、利用できる制度、手続きの流れまでわかりやすく解説 します。
相続対策を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
1. 不動産の相続対策としての生前贈与とは?
● 生前贈与とは
生前贈与とは、贈与者が存命中に財産を無償で譲り渡すことを指します。
手続き自体は口約束でも成立しますが、後の誤解や税務署の調査に備え、
贈与契約書を作成するのが基本です。
● なぜ相続対策になるのか
不動産は資産価値が高く、相続の際には分割をめぐる争いの原因になることがあります。
生前贈与であれば、元気なうちに 誰に、どの不動産を引き継がせるか を明確にできるため、
相続トラブルの回避につながります。
ただし、贈与税などの負担が発生するため、総合的な判断が必要です。
2. 不動産を生前贈与するメリット
2-1. 意思どおりに確実な承継ができる
遺言書では解釈の違いが起こる可能性がありますが、
生前贈与であれば贈与者本人が手続きに関わるため、争いを避けやすくなります。
2-2. 相続トラブルを回避できる
不動産は分割しにくい資産のため、相続時に揉めやすい傾向があります。
事前に特定の相続人へ贈与しておくことで、遺産分割協議をスムーズにできます。
2-3. 将来の相続税負担を軽減できる可能性
以下のような不動産では、生前贈与をすることで将来の負担軽減が期待できます。
・値上がりが見込まれる不動産
再開発エリアなど、評価額が将来上がりそうな不動産は、
評価額が低いタイミングで贈与しておくと相続税対策に有効です。
・収益物件(賃貸物件など)
賃料収入が贈与者の資産を増やしていくため、相続財産が増える原因になります。
早めに贈与すれば、収益が受贈者側へ移るため、相続税対策となる場合があります。
2-4. 要介護状態への備え
高齢になると不動産管理が難しくなるケースがあります。
信頼できる家族へ早めに贈与しておくことで、管理をスムーズに移行できます。
2-5. 受贈者が早期に不動産を活用できる
贈与された不動産は、居住や賃貸運用など、生活に直接活かすことが可能です。
3. 不動産を生前贈与するデメリット
生前贈与はメリットが多い反面、税負担や制度上の注意点もあります。
3-1. 贈与税が高額になる場合が多い
場合によっては、相続したほうが税負担が少なくなるケースもあります。
(例)4,000万円の不動産を贈与した場合は贈与税が約1,530万円、相続の場合は約40万円のケースも。
3-2. 不動産取得税・登録免許税が発生
所有権移転には登記費用や取得税がかかり、生前贈与では相続より税率が高く設定されています。
3-3. 「小規模宅地等の特例」が使えない
相続では土地の評価額を最大80%まで減額できる制度がありますが、生前贈与では適用不可です。
3-4. 相続時精算課税制度のリスク
贈与時の評価額を基準に相続時に精算するため、価値が下落していると損になる場合があります。
3-5. 家族間トラブルの可能性
管理方法
収益の扱い
特別受益として扱われる問題
などで、後の相続協議に影響する場合があります。
4. 不動産贈与で活用できる主な税制優遇
● 暦年課税(毎年110万円まで非課税)
ただし、死亡前7年以内の贈与は相続財産に加算される期間が拡大。
● 相続時精算課税制度
2,500万円の特別控除+年間110万円の基礎控除が利用可能。
● おしどり贈与(配偶者控除)
婚姻期間20年以上で、居住用不動産を最大2,110万円非課税で贈与可能。
5. 不動産を生前贈与する際の手続き
5-1. 贈与契約書の作成
トラブル防止・登記手続きのため、書面で作成します。
5-2. 所有権移転登記(名義変更)
法務局での手続きが必要。司法書士への依頼も可能です。
5-3. 贈与税の申告・納税
110万円超の贈与は申告が必要。特例利用時も申告が求められます。
5-4. 不動産評価額の確認
贈与税計算には路線価・固定資産税評価額等を使用します。
6. まとめ
不動産の生前贈与は、
相続税対策
家族間トラブルの回避
早期承継
など、多くのメリットがある反面、贈与税の高さや特例が使えない点など、リスクも大きい制度です。
最適な方法は、財産状況や家族構成によって大きく変わります。
判断に迷う場合は、税理士など専門家への相談をおすすめします。